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第94回日本医療機器学会大会
大会長 臼杵 尚志
香川大学医学部附属病院
手術部・部長

 

大会テーマ

Beyond Future

 この度、第94回日本医療機器学会の開催にあたりまして、大会長の任を仰せつかりました香川大学手術部の臼杵尚志と申します。伝統ある学会の開催を受け持たせていただきます光栄を、ご選任下さいました会員・役員の皆様方に心より感謝申し上げます。

 医学史の中で、感染に関する歴史を振り返りました際、興味深い時差に気が付きます。1665年に発表されたフックの顕微鏡図譜から、レンズを覗いた当時の人々は小さな生き物(らしきもの)の存在を知っていたと推測されます。ただ、疾患との関係には思い及ばず、1859年のパスツールによる実験以降の「細菌感染」という概念の出現までには200年の歳月が流れています。「後から見れば何のことはない事実も・・」という一例ですが、では、我々にも同様のことはないのでしょうか。改めて振り返りたくなります。

 さて、医薬品は化学の進歩と共に進化し、18世紀以降に成された様々な成果については誰もが知るところです。一方、医療機器については、ギリシャ・ローマ時代にも現在と酷似した器械が使われていたようで、進化がなかったのではとも思ってしまいます。本学会の名称が2007年まで「日本医科器械学会」であったこともそれを物語っているようで、医薬品の進化より大きく遅れをとっていたようですが、では、現在の医療機器はどうでしょう。最近の四半世紀、特に外科領域における低侵襲化の波は近年の電気工学や情報工学、物性化学などと結びつき過去とは完全に異なった機能を持つ医療機器が次々と開発されています。そう考え、俯瞰的に見ますと、「医療機器学」の分野は今が正に新しい時代を切り開きつつある時で、我々は、500年後1000年後の人々から医療の大きな転換点と認識される時代の、その最中に居るのではないでしょうか。

 では、そこに立つ我々は、何をすべきなのでしょうか。あくまでも私見ではありますが、思いつくままに、それぞれ次元の異なるいくつかの点について述べさせていただきます。
第一には、医学というものが人類の極めて利己的な学問であることを再認識すべきと考えます。より良い「生」を求めるのは生物のしがない習性で、色々な学問の成果を「今の生」のために応用するのは当然の流れですが、過ぎれば地球という狭い環境の中で、そのつけは必ず人類に返ってきます。抗菌薬多用による耐性菌出現の脅威が人類に迫っているように、簡便さのみに注目した機器の開発や多用は500年後1000年後の人達に、劣悪な生活環境という大きなつけを残す可能性すらあります。機器開発とその利用が伸びている今こそ、振り返るべき点かも知れません。

 身近な話題としては、転換期ゆえに潜在するリスクが挙げられます。新しい技術が導入された際に、患者だけでなく職員もが予想もしなかったリスクに曝されることは過去の歴史が物語っています。とすれば、リスクを再認識することは当然ですが、それを起こさない機器、そのリスクを回避するための機器(あるいは補助具)の開発が求められるわけですが、それは新たなビジネスを生むことを意味します。産・学とさらに現場が結びついた本学会の力の見せ所と言えるかも知れません。
最後の一つは「学」に所属する会員のテーマです。薬理学が医学部の必修科目であるように、「医療機器学」も医学部のカリキュラムに加えるべきではないでしょうか。薬を使用するのは薬理動態を知る者ということが極めて常識的であるように、特に侵襲的治療機器については、その理論を学んだ者が使用すべきというのも自然な考えかと思います。我々医療機器に親しむ学会員としては、是非とも取り組むべき、目標とすべき点かと思いますがいかがでしょうか。

 このような「将来を見据え」さらにその向こうを窺おうという意味で、今回のテーマを「Beyond Future」とさせていただきました。有意義な集会になるよう全力で取り組みますので、多くの演題の御応募と多くの方々の御参加をどうぞよろしくお願いいたします。

 

第94 回日本医療機器学会大会
大 会 長  臼 杵 尚 志
(香川大学医学部附属病院 手術部・部長)